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溶連菌感染症

投稿者 j_sugimoto 日時 2016年4月18日

最近、インフルエンザは殆どみられなくなりましたが、溶連菌感染症の患者さんが増えています。

溶連菌感染症は、正しくは「A群β溶血性連鎖球菌」という細菌による感染症のことです。短くして「溶連菌」と呼んでいます。

症状は、通常は、発熱・咽頭痛で発症し、初期には普通の風邪とほとんど区別がつきません。吐き気や腹痛をともなう場合もあります。典型的な症状が出ると、イチゴのようなブツブツの舌(いちご舌)になり、紅い細かい発疹(紅斑)が皮膚にでてきます。全身に出る場合もありますし、どこか、あるいは数カ所に出る場合もあります。
後に、治る過程で、指先の皮膚が薄く細かく剥けることがあります。

診断は、喉に特徴的な赤みがあることで疑い、迅速検査で診断するのが普通です。
喉の赤みと流行状況や症状から、検査をせずに診断することもあります。

また、最近は、喉の赤みが溶連菌に特徴的な赤みには見えず、ウイルス性の咽頭炎(いわゆる「のどかぜ」)の時とかわらないように見え、「念の為に」検査をしてみたところ、陽性なので溶連菌感染とわかった、という患者さんも多いように思います。

溶連菌感染症が怖いのは、重症化しやすく治りにくい合併症をおこすことです。熱も下がって治ったと思っている頃に、血尿が出たり、顔や脚がむくんだりすることがあります。溶連菌感染症後の急性糸球体腎炎です。これを発症してしまうと、入院安静が必要で、きわめてまれではありますが、命にかかわる場合もあります。
また、「リウマチ熱」という合併症もあり、これは心臓に後遺症を残すことがあります。

溶連菌そのものは、抗生剤がとてもよく効くので、熱や咽頭痛などの症状は薬をのめばすぐ(1~2日で)おさまる場合が多いのですが、少しでも菌が残っていると、上記の合併症を引き起こす可能性が高くなってしまうので、10日間ぐらいの期間(抗生剤の種類によっても異なります)、しっかり薬を内服して、確実に治癒させることがとても大切です。

また、1日でも抗生剤を飲むと、検査で菌を証明することができなくなります。検査に出ないから治っているのかというとそうではなく、検査に出る喉の表面にいる溶連菌だけがなくなってしまい検査には出なくなりますが、体の中にはまだ溶連菌が残っていて、治療をやめてはいけないのに検査でわからない、ということになってしまいます。
ですから、抗生剤内服前に診察・検査をして、きちんと診断をする必要があります。
「熱があったらとにかく抗生剤を飲む」というような、いい加減なことをしていると、この病気(などの診断・治療が大切な細菌感染症)を見逃してしまうことになります。

発症から2週間ぐらい、つまり抗生物質を飲み終えた後ぐらいに、尿検査をして、腎臓に異常がないことを確認しておくのが望ましいです。
もちろんそれまでに、血尿や体のむくみ、なんだか元気がない、息がきれやすくなったなど、気になる症状があれば、適宜、受診して下さい。

普通は、抗生剤内服後、解熱して丸1日程度たてば、少なくとも喉の表面の、うつる場所にいる菌はほぼ除菌されますので、登校や登園は可能になります。
しかし、発熱が続いていたり、元気がないときは、十分薬が効いていない場合もありますので、症状が落ち着くまで安静を保つことが必要です。
また、きちんと薬を飲んでいるにもかかわらず、3日たっても熱が下がらない時は、処方されている抗生剤の効きにくい菌かもしれませんので、もう一度受診して下さい。

飛沫感染ですので、予防には、手洗い・うがいを徹底して下さい。マスクも有効です。また、患児と同じコップや食器を使うことは避けて下さい。
溶連菌は感染力が比較的強いので、兄弟・姉妹の方は感染している可能性があります。
潜伏期間は通常、2~5日程度と考えられています。喉の痛みや発熱などの症状が出てこないかを、注意して観察してください。症状の出現があれば、受診して下さい。